ガンジス川

バラナシでの2日間を文章で表せる自信はないけれど、忘れないうちに自分なりの言葉で記録しておきたいと思います。

長くなると思います。

 

 

インドに住んでるからには一度は行っておきたかったバラナシ。

 

週末だけで行けるところだけど、だからこそなかなか計画を立てられていなかった。

 

日本から友達が来てくれて、この機会に一緒に行くことに。

 

 

デリーから飛行機で約1時間半。

 

ホテルの送迎を頼んでいたから、空港を出てすぐに車に乗り込めた。

 

ちょうど一年に一回のヒンドゥーのお祭りとかぶったせいでホテルから一番近い道路は車が入れず、離れたところから歩くことに。

 

ホテルのスタッフからはぐれないように、雨の後の泥道をバイクとオートと力車と牛と犬と人がごった返す中ひたすら歩く。

 

牛もデリーより多くて、道路の真ん中に座って寝ていたり人の波に紛れて歩いているからぶつかりそうになるし、そこらじゅう糞だらけ。

 

普段デリー近郊で見てるインドはまだまだだなと思わせられる、溢れるTHEインド感。


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路地に入ると更に増すその感じ。


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ホテルに着いて部屋に荷物をおろす。

 

ホテルのバルコニーからは初めて見る念願のガンジス川
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窓を開けてると猿が来るから要注意。

 

 

まずはラームナガル要塞へ。

 

ホテルにタクシーを頼むと、スタッフがタクシーまで連れてくれる。

入り組んだ路地を抜け、スタッフと一緒にオートに乗りタクシーの乗り入れられる場所まで行く。

 

ラームナガル要塞は、修復の手もあまり加えらていないのか良くも悪くも歴史を感じるところだった。

ゴミもたくさん落ちていて湿度も高く、暗い通路なんかは廃墟感満載。


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小雨が降ってきたのでいったんホテルに戻る。

 

あの路地を自分たちで歩いてホテルまでたどり着ける気がしない。

どうしよう。

タクシーの運転手にホテルの人が迎えに来るのか聞いてもいまいち伝わってるのか分からない。

ごちゃごちゃした雑踏の中に下ろされ、振り返るとホテルのお兄さんが1本の小さな折り畳み傘を持って立っていた。

 

道案内はいつもこの人だったけど、この人まじで神出鬼没。

振り返れば奴がいる

 

牛も。
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そして折り畳み傘1本でスタッフ抜いても大人3人、子ども1人はなんともならない。

雨が弱くなった間にホテルまで行けたから使わずに済んだけど、その1本でどうするつもりだったんだろうか。

 

 

ガンジス川ではボートに乗りたかった。

 

早朝朝日を見ながらか、夕方ガートでやるプジャ(ヒンドゥー教のお祈り) を見ながらか。

 

この日はあいにくの雨。

ただ、明日の朝も予報では雨。

 

どっちも雨なら、夕方の方が濡れてもホテルでシャワーできるし着替えもある。

朝、早起きして朝日見れずに雨に打たれる方が、気持ち的にしんどいという結論に至り、夕方に乗ることにする。

 

あと、雨が降るかと雨の強さは運次第。

 

全員O型。

全員、「ま、なんとかなるか」と思ってる。

そんなところがこのメンバー楽で大好き。

 

ボートの時間になって乗り場に行くと、なかなか強い雨脚。


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すると神出鬼没のお兄さんが折り畳み傘2本を持ってきてくれた。

 

あ、ありがとう。

ないよりマシか。。。

 

行くか!と腹を決めてボートに乗り込む。

旦那の膝の上に息子が座り傘をさして、私と友達でもう一本の小さな傘に身を寄せ合う。

 

ボートが進み始める。


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しばらくすると雨が弱くなってきて霧雨になってきた。

もう傘がなくても大丈夫。

 


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進んでいくと火葬場が見えた。


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ボートからは火葬場の写真を撮ってもいいらしい。

 

友達はこの辺りからなぜか涙が止まらなくなっていた。

 

私は今目の前で燃えてる炎が、遺体を燃やしているものだということが、頭では理解していても心がついていってなくてただぼんやりと見つめることしかできなかった。


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ボートを下りてガートでやってるセレモニーを見に行く。

さっきボートから見えたガートで、火を持った男の人たちが踊りみたいなのをしていた。


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翌朝、目が覚めると外はよく雨が降っていた。

昨日の夕方ボートに乗っておいてよかった。


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川に飛び込んで遊ぶ子供たち。

雨で増水してるけど危なくないのかな。

 

ゆっくりと朝ごはんを食べていると更に雨は強くなる。

 

傘は2本。

少し雨が弱くなったタイミングを見計らい、旦那と息子はお留守番で、友達と2人、路地を散策に出かける。

 

もちろん足は濡れるだろうと覚悟はしていたけど、道はただの川。


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この水にはそこらじゅうに落ちている牛様の御排泄物が溶け込んでいるのだろう。

有難や。有難や。

覚悟を決めてじゃぶじゃぶ歩く。


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牛も雨宿りするんや。


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昨日のお祭りのために、インド各地からバラナシへ来ているらしい人達が何か唱えながら列をなして歩いている。


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雨に濡れるのも厭わず裸足で、疲れも気にせずに歩き続けられる精神を生み出す宗教というもの。

 

日本人は宗教というものを普段意識して過ごしている人は他の国に比べると少ないはず。

初詣に神社に行くし色んな節目に神社やお寺に行く。

でも私は、仏教について、日本の神道について、はっきりと答えられる知識はほとんどない。

一般的なレベルでクリスマスも楽しむ。 

でも聖おにいさんレベルのことも知らないことがたくさんある。

少なくとも私は、人に聞かれても自分が無宗教かどうかすらもはっきり答えられない。

ヒンドゥー教がどうか以前に、宗教と生活がどう結びついてるかピンと来ない。

 

だから私には、雨に打たれたり足が痛かったりする不快感に勝る信仰心を単純にすごいなと思う。

逆に言えば、すごいなくらいしか思えることがない。

 


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バラナシで一番有名な火葬場のあるマニカルニカー・ガート。


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ガートの方へ歩いていると、おじさんに「ガートはこっちだよ」と声をかけられる。
そのままナチュラルにガートの説明を始めたから、「ノーガイド!」と言う。
すると、おじさんはガートのほとりにある最期を待つ人のホスピスで働いているという。ガイドじゃないと。


そのおじさんによると、ここでは1日300人。
多い時だと500人の火葬を行うらしい。
1人に3時間。
お腹やお尻など、燃え残る部位もある。
ガートの中には親族でもヒンドゥー教の女性は入れないそう。
私たちは入っていいと言われ、他にも欧米人の女の人もいた。
川のそばの低いところでは火葬代が安くカーストの低い人が、少し高いところのコンクリートの建物ではカーストの高い人が火葬される。
火は3000年絶えず燃え続けているらしく、そこから火をうつして火葬する。

全部は思い出せないけどそんなことを話していた。

 

自分でもヒンドゥー教ガンジス川の存在について来る時に少しだけ調べたこと。

 

それによると、ヒンドゥー教の人は輪廻転生について84万回生まれ変わるとされているらしい。
それがガンジス川に流されるとその輪廻転生の輪から抜け出せる。
生き死にを繰り返し生きないといけないことを苦と考えてるところ、ガンジス川に流されて一発OKとしちゃうところがなんともインドらしいなぁと思った。

 

女の人、妊婦、自殺者などは火葬されずにそのままガンジス川に流されるらしい。

そういう人は輪廻転生して人生を全うしなさいみたいな意味なのかな?

 

ガートの火葬場に着いて最初に目に入ったのは、布にくるまれた子供らしきものを抱いた女の人。
その人はお祈りが終わると子供を川に流すんだとおじさんが言っていた。
その少し横では火葬されている人がいて、燃える薪の中から足なのか手なのかがだらりと出ている。
そして火葬が終わった人の黒い遺灰を川に流している人。
その遺灰目がけて3人の子供たちが次々に飛び込んできゃっきゃ言いながら遊んでいる。

それら全てが今自分の視界の中に収まっている。

 

先へと案内されるが足がすくむ。
私はこれ以上何が見たいのか、何が知りたいのか、何かを理解したいのか。

でも理解が追いつかない光景に頭も心もいっぱいになっていて、言われるがままに3000年燃え続けている火を見に行って、カーストの上の人の火葬場もちらっと見せてもらった。

 

でももう本当にこの辺で心の何かがいっぱいで、キャパオーバーみたいな気持ちになる。

 

 

立ち去ろうとすると案の定おじさんが「ドネーションをくれ」と言ってくる。

おじさん曰く、貧しい人のために薪を買って寄付して欲しいと。

今となってはこのおじさんの手口だったのかなと思うけど、この時はもう感情が訳分からなくなっててその気持ちをどうにかしたくて、少しの足しにでもと数百ルピーを渡した。

すると「ノーノー。薪1キロで2000ルピーなんだ。何キロ買ってくれる?」

ホテルにお財布を置いて少しのお金だけ持って来てた私たち。

それを説明しても、さっきまで英語で説明してくれた人と同じ人かと思うほど通じない。

こんなとこまで来て、こんな光景の中で「お前もか!」と言いたい気持ちを堪えて、その数百ルピーだけ押し付けて逃げるように帰った。

 

「ちゃんと話そう。私はこんなのは嫌いだ。」みたいなことを言ってたけど、この時は一緒にいる友達を守ることと自分の感情を抑えることで必死だった。

 

 

逃げ帰ったホテルでは息子が楽しそうに遊んでいた。

 

ガンジス川のほとりに座っていた子供を抱いたお母さんを思い出す。

 

死んでしまったとは言え自分の手で子供を川に流すとか絶対むり。

宗教の中にある価値観を理解できない私には絶対にできない。

 

あのお母さんは、もちろん悲しい気持ちは母として変わりないんだろうけど、どんな気持ちで川に流すんだろう。

 

私がもし宗教というものを信じていれば出来るんだろうか。

 

 

バラナシで見たあのお母さんの後ろ姿は一生忘れられないだろうと思う。

 

 

いまだに全然分からないことだらけだけど、生きることと死ぬことと宗教とをあんなに感じ考える場所は、バラナシにしかないんじゃないだろうか。

 

 

 

 

↓すべてはここから始まった。